魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一 第二章2.3
警笛(けいてき)が鳴った。低く震える音が、薄青い空にすいこまれていく。
デッキで談笑していた一団が、海上を見てなにやら指さすのにつられ、リディアも首を動かした。
軍の巡視艇(じゅんしてい)だ。大きな黒い影がこちらに近づいてくる。と思うとこちらの船がゆっくりと速度を落としていた。
「何かあったのかしら」
アーミンか、不安げに眉(まゆ)をひそめた。
「お部屋へ戻りましょう、リディアさん」
「ロイン君、いったいどういうつもりだね。伯爵を強盗犯扱いする気だったのか?」
「いえあの、少佐、ただ似てるなあと」
「似ていないぞ。あの似顔絵はいかにも悪人面だった」
「そうなんですけど、絵はあてになりませんから。それに……、髪や瞳の色はともかく、重大な特徴があるじゃないですか。それを確かめればはっきりすると思いまして」
急ぎ足で通路を歩いていたえらそうな軍人は、急に足を止めると部下の方に向き直った。
「なら君は、伯爵に向かって舌を出せと言うつもりだったと?」
通路のランプ台の、陽当りのいい大理石に寝転んでいたニコは、昼寝を妨げられてぴくりと耳を動かした。
「そんな屈辱的なことをさせて、何もなかったで済むと思うのか? 当然拒絶したあげく、上に文句を言うに決まっている。それに、舌にクロスの入れ墨があるというのは、アメリカの殺人鬼の方だ。ロンドンの強盗犯と混同するのは、民衆の興味をあおる低級紙(ゴシップペーパー)だけにさせておきたまえ」
「……すみません。でもあの、本当にアメリカで処刑されたんですか? 通称サー・ジョンと呼ばれた強盗殺人犯は、高貴な雰囲気を持つカリスマ的な人物で、縛り首になってさらされた死体は、どうにもそれらしくないという噂も……」
少佐は、部下に向かってあからさまに肩をすくめた。
「首をくくられた死体に、高貴もカリスマもあるものか。それにロイン君、もうひとつ基本的に間違っている。私たちが捜すべきは、特等船室の主(あるじ)ではなく、どこかにひそんでいるだろうゴロツキだ」
ふむ、とヒゲを撫(な)で、ニコは軍人たちが通り過ぎるのを見送ると、二本足でてくてくと、リディアの部屋へと戻る。
「なんだかなあ」とひとりつぶやいた。
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