魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第五章5.2
緑のジャックはスパンキーのゆりかごから。
月夜にピクシーとダンス。
シルキーの十字架を越え。
プーカは迷い道。
ワームの足跡に沿って。
ファージャルグの右側へ。
デュラハンの足元をくぐり。
レプラホーンの宝物。
クルラホーンの寝床。
バンシーについていけ。
メロウの星は星とひきかえに。
さもなくば、メロウは悲しみの歌を唄う。
城は、断崖(だんがい)に面した高台にあった。
ゴシック風の尖塔(せんとう)を持つ青い城は、淡い緑の島を見おろしながら、風景に違和感なくとけ込んでいる。
いかにも別荘らしい、優雅な建物だった。
船酔いもおさまったリディアは、皆と一緒に城へとやって来ていた。
「メロウの島か。ここに目をつけたリディアは正しかったようだ。城に宝剣があるのは間違いないな」
エドガーは、リディアの方を見て満足げに微笑(ほほえ)んだ。
しかしリディアにとって困難なのはここからだ。気持ちを引き締める。
「そうね、この島が〝緑のジャック〟よ。木の葉で覆われた緑の精霊。船から見えたこの島は、うずくまる木の葉男そのものだったわ」
「なるほど、コインの詩の最初の言葉か。では次のスパンキーは?」
「鬼火(おにび)のこと」
「墓地を探せばいいのかな」
「いいえ、スパンキーは洗礼前に死んだ子供の魂だというわ」
「それなら墓地ではなく、別の場所に埋葬(まいそう)されますわね」
アーミンが、これは開きっぱなしになっていた門の方へと近づいた。
門から奥へと続く道も、その両側に広がる庭園も、三百年も無人の城だとは思えないほど手入れが行き届いている。
島の人々が、いつか戻ってくると信じている領主のために、城を美しく保ち続けているのだろう。
「しかし、この城は別荘だ。子供の墓があるとしても、いったいどこの誰のだろう」
「そうですね。城が建つ前から、墓だけあったのかもしれませんが」
「それとも、慰霊碑(いれいひ)のようなものかもしれないな」
エドガーとアーミンが並んで歩く。男装のアーミンだが、質素(しっそ)な服装も肩までしかない髪も、女性らしい艶(つや)を隠してしまうことはない。
肩が触れ合いそうなふたりの距離に、リディアはゆうべのことを思い出し、ひとり赤くなってしまうのだった。
あのあとどうしたのだろう。朝まで一緒だったのだろうか。
「まずはその、〝スパンキーのゆりかご〟とやらを手分けして探そう。リディア、きみは僕と一緒においで」
「えっ!」
おどろいたのは、いきなり声をかけられたからだ。妄想(もうそう)に気づかれてしまったようで気まずかった。
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