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《伯爵与妖精》卷二第三章牛奶糖与橘子3.8

时间:2011-10-25 13:31:09  来源:可可日语  作者:ookami

「リディアさん、私はエドガーさまのために命を捨てても悔いはありません。誰もがそうだったと思います。でもエドガーさまは、死んだ本人に悔いがなかろうとつらいのでしょうか」
「それは、つらいと思うわ」
 きまじめな表情でリディアに問いかけた少年は、少し目を伏せた。
「エドガーさまはいつでも、主人でありリーダーでした。弱音を吐くことも、助けを請(こ)うこともなく、みんなの信頼を背負ってひとりで立っていました。もっと対等な友人として、うちとけた関係の仲間もいましたけれど、エドガーさまの弱みを受けとめることができたかというと疑問に思います。私たちのリーダーは、挫折(ざせつ)も後悔も迷いも見せない、それが私たちの誇りでした」
 でも、人はそんなに強くはない。エドガーがかかえていた重圧と、それでもなお仲間を引っぱっていこうとした意志の強さに敬服する。
 たぶんレイヴンも、平和を手に入れた今は、そのことに気づいたのだろう。
「でも今は、少し気持ちを休めてくださったらいいのにと思うのです」
「あなたがそう言ってあげればいいのよ。主従よりも、対等な親友だと彼は思ってるはずよ」
 レイヴンは、しかし強く首を横に振った。
「私には無理です。私の中の精霊は、エドガーさまを主人と認めているからこそ従うのです。けじめを曖昧(あいまい)にしてしまったらとんでもないことになります」
 レイヴンの精霊のことは、リディアにはよくわからないが、彼が従者の姿勢をけっして崩さないのには、深いわけがあるのだとは理解した。
「ですからリディアさん、どうかエドガーさまを嫌わないでください」
「え、べつに嫌ってないけど……」
 唐突(とうとつ)な言葉に戸惑わされる。
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「エドガーさまが完璧(かんぺき)でなくても、失望しないでくれますか?」
「あたし、あいつが完璧だなんて思ってないわ。だって軽薄(けいはく)だし悪党だしうそつきだし、欠点だらけじゃないの」
 主人に対してずいぶんなことを言ったにもかかわらず、レイヴンはその返事に満足したかのようにすみやかに退出した。
 呆然(ぼうぜん)としたまま、リディアは取り残される。
「だから、何が言いたかったの?」
 もはや戦場の君主ではないエドガーに、休んでもいいよと言ってやってくれということなのだろうか。
 弱音や愚痴(ぐち)を受けとめる役目を、レイヴンはリディアに求めているのだろうか。
 でもそんなの、あたしでなくたって、さっさと恋人でもつくればいいじゃない。候補なんていくらでもいるんだし。
 ふと、ロザリーの顔が頭に浮かべば、また腹が立ってきたリディアは、レイヴンの話にエドガーのつらさを思いやっていた気持ちが吹き飛んでしまうのだった。
 調べものがあると言って、リディアは伯爵(はくしゃく)家を早退した。

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