《伯爵与妖精》卷二第三章牛奶糖与橘子3.9
帰宅したエドガーが、リディアの仕事部屋のドアを開けたとき、目に飛び込んできたのは、灰色の猫が優雅にティーカップを傾けている姿だった。
テーブルに届くように、椅子の上に重ねたクッションに腰かけている。
湯気と香りを味わうように鼻をひくつかせ、ひとくちすすると、ソーサーにカップを戻す。
エドガーの方をちらりと見て、何事もなかったかのように椅子の上で姿勢を変える。つまりは、猫らしい座り方に。
たった今見たお茶を飲む猫の姿は、目の錯覚(さっかく)だったのだろうかと思うくらいふつうの猫が座っているだけだった。
「リディアは帰ったと聞いたけど、きみは一緒に帰らなかったのか」
「けっこうここが気に入ってるんだよ。ベルを鳴らせば入れたての紅茶が出てくるしな」
クッションに寄りかかり、満足そうに目を細める。
鳴き声は、ふと意味のある言葉のようにも聞こえる。エドガーは、ニコがふつうの猫ではないかもしれないと、あらためて考えさせられた。
テーブルをはさんでニコの正面に座る。
「なあニコ、リディアは僕のこと、どう思っているんだろう」
「うさんくさいタラシ」
と、ニコの冷たい視線は言っているような気がした。
「それはまあ、仕方がないよね」
「おいっ、納得するかよ」
「でも、今のところ彼女には、好きな男はいないだろう? チャンスはあると思っているんだけど」
「はあ? つーかあんた、くるくるオレンジ巻き毛のお嬢(じょう)さんは?」
「ロザリーはね、ただのお友達。向こうもそう思ってるよ」
「いいかげんだなー、そうは思えない親密ぶりだぞ。だいたいあんたの、リディアへの接し方だって、ふざけてるとしか思えねえよ」
あきれたというふうに、ニコはひじ置きに寄りかかり、頬杖(ほおづえ)をついた。
微妙な体勢だが、あり得ないともいえない。
「ふざけてるわけじゃないけど、僕だってそんなに自信ないし、ふられるのはいやだ」
「うそつけ。リディアみたいなのがちょっとばかりめずらしいだけだろ。言っとくけど、リディアとあんたは住む世界が違いすぎるんだ。リディアはそこんとこわかってて、あんたとは距離置いてんだから、引っかき回さないでくれ」
まともに叱られた気がして、エドガーはため息をついた。
自分がリディアをそばに引き止めている理由は、何なのだろう。
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