《伯爵与妖精》卷二第五章隔着玻璃的爱恋5.4
「どうしたんだ、リディア」
わからない彼女の代わりに、ニコが答えた。
「人間ってのは、魂だけで生きていけないからな。長いこと身体を離れてたら、妖精の魔力で瓶に閉じこめられたとはいえ、少しずつ生気を失ってくんだ」
「なんだって? なら急がなきゃならない」
あわてているからか、エドガーはニコと話をしているという自覚がないようだった。
「で、グレアムの奴がリディアをどこに監禁(かんきん)してるかわかったのかよ?」
「リディアが乗せられたところを見たわけじゃないが、船の目処(めど)はついている。ただ面倒なことに、奴の船会社はウォルポール男爵(だんしゃく)家が半分出資しているものだから、差し押さえるわけにもいかず……」
「あー、悪いが人間社会の仕組みを学んでる時間はないんだ。かいつまんで言ってくれ」
「つまり、勝手に船を止めるのも、中を調べるのも難しい」
「はあ? あんたもと強盗だろ。武器持って襲いかかって強奪(ごうだつ)しろよ」
「きみは誤解しているようだが、僕はそんな下品なやり方をしたことはない」
「ドロボーに下品も上品もあるか!」
「あの……、警察にグレアム卿(きょう)の悪事を話したら……」
リディアは提案してみたが、時間がかかりすぎる、とエドガーは言った。
自分がどのくらいもつのかわからないが、一日も待てない気がしている。グレアム卿のように地位のある人物が相手だとなると、証拠(しょうこ)も確実なものを集めなければならないし、警察なんてすぐには動いてくれないだろう。
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