魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一第四章4.2
「あ、ごめんなさい。その……バカにしてるんじゃなくて、なんていうか、驚いてるの。そんな考え方、はじめて聞いたから」
「そう?」
騒がしい妖精たちが去ってしまうと、急にリディアは、エドガーとふたりきりを意識した。
道しるべをつくるために、壁際で肩を寄せ合っていた距離のまま、彼がこちらをじっと見おろすからだ。
それに今は、ニコもいない。
「な、なんだかあたし、しゃべりすぎてるわね。妖精のこと、家族以外でこんなに話したのはじめてで……、ふつうはバカにされるだけだから。ああでもあなたも、変な女だと思ってるかもしれないけど」
気恥ずかしくて、会話を途切れさせまいとする。
「そんなことは思ってないよ」
「そう。……本心なら、あなたもやっぱり変わってるわ。でもね、さっき地主さんの前で、あたしが妖精の話をするのをいやがらなかったでしょ? そういうのって、意外とうれしいみたい。おかげで、言いたいことが言えたわ。いつもなら、よその家で困ってる妖精を見かけても、なかなか口には出せなくて。なのに、味方をしてくれる人がいるってだけで、気が強くなっちゃうのね。でもあなたがそんなふうなのは、宝剣を見つけるまで、あたしの機嫌をそこねないためだってわかってるし」
何を言っているのか、だんだん自分でもわからなくなってくる。
「それにあなたってうそつきだから、口先だけでいくらでも、あたしの気分をよくするようなことが言えるんだって思うのに、うっかりだまされそうになるの。……楽しそうに道しるべをつくったりするから、あたしのこと、わかってくれる人じゃないかって……」
あれ? これじゃあまるで、告白でもしているみたい。
「ていうか、あの、誤解しないでね。あたし、あなたのこと信用してないのよ。でもちょっとだけ、ほんの少しうれしかったってだけ……、……ちょっと、髪の毛さわらないでよ」
「猫の毛みたいにやわらかいのに、ちっとももつれないのは、妖精がしょっちゅう梳(と)かしてるの?」
いったいどうすれば、そんなせりふが思い浮かぶのかと思いながらも、あまりにもやさしげに微笑(ほほえ)むものだから、リディアはどうしていいかわからない。
「……妖精は金髪が好きなのよ。こんな鉄錆色(てつさびいろ)に興味ないわ」
「キャラメル色」
「は?」
「そう言った方がきみには似合う」
こんなに単純なことで、髪の毛をもてあそぶ失礼な男に、平手を振りあげられなくなるなんて。
「食べてみたらあまいのかな?」
こいつ、油断も隙(すき)もない。そう思いながらも、リディアはそれが不愉快なのかどうかさえわからなくなっていた。
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