魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一 第一章1.2
「ロード、どうなさいます?」
「そうだね……、彼女の言うとおりにしよう。でもアーミン、そのドレスはあんまり僕の好みじゃないな」
「エドガーさまが着るわけではありませんわよ」
「わかってるけどね、できればもうちょっと襟元が開いてた方が」
「ディナーの席に下心はいりません。こちらのほうがお嬢さまにはお似合いです」
きっぱりと言い切る。召使いとはいっても、彼女の場合はもっとうちとけた間柄に見えた。
「さ、お嬢さま、こちらへどうぞ」
寝室の方へ案内され、着替えを勧められる。
「あの、自分でできますから」。
人に手伝ってもらうことに慣れていないリディアはそう言った。
がしかし、結局ひとりで着替えられなかったのは、リディアが知るよりもずっとフォーマルなドレスだったからだ。
コルセットやクリノリンから着付け直さなければならず、繊細(せんさい)すぎるリボンやレース、ビーズ飾りに気を使いながらどうにか着せてもらう。
「では髪を結いましょうね」
少しばかり、子供扱いされている。
鏡の前にリディアを座らせ、にっこりと微笑む彼女は、そう劣等感を覚えるほど、女っぽい色気のにじむ人だった。
きりりとした顔立ちだが、けっして男性的ではない。そっけない短髪も、女らしさをそこなわない。
しみひとつない白い肌、髪も瞳も黒に近いブラウンで、くっきりした眉に花びらのような赤い唇。
鏡に映るリディアは、抜けるような色白とはいえず、赤茶の髪はぱっとしないし、金緑色の瞳は個性的すぎて人を不安にするらしい。目鼻立ちはくっきりしていて、美人だと父だけは言ってくれるが、せっかちな性格も災いしてきつい印象に輪をかける。
くわえて『変わり者』だから、女の子として見られたことがない。
十七にもなっておろしたままの髪は、たしかに子供っぽいとわかっているが、いつもうまく結えないし、誰も気にしやしないのだ。だからリディアがひとりでできるのは、せいぜい三つ編みでまとめるくらいだった。
「アーミン、時間だよ」
外から声がかかる。
「ただいま。さ、できましたわ」
ぼんやりしている間に、鏡の中にいるのは見慣れない清楚(せいそ)な令嬢(れいじょう)になっていた。が、それも一瞬目にしただけで、自分の姿をゆっくり検分するひまもなく、リディアは部屋の外へと送りだされた。
「いいね、ますます美人さんだ」
「からかわないで」
「なぜ? もう少し笑った方がかわいいと思うけどな」
「何のために笑わなきゃいけないの?」
「僕のために」
なんなの、この人。リディアは正直に、不快感を顔に出す。
「……考えてみれば、どうしてあたしがディナーに同席しなきゃいけないのよ」
しかし彼は、しれっと言った。
「だって、おなかすいてるだろう?」
それはそうだ。昼食には駅馬車の待合所でパンをかじっただけだった。
「じゃなくて、ひとりで食べた方が気楽だってこと」
「もったいない、それじゃあきみを見せびらかす機会がない」
「はあっ? あたしはね、あなたのアクセサリーじゃないわ」
「もちろん、主役はきみだ。僕は引き立て役。気に入ってもらう自信はあるよ。エスコート役の不手際(ふてぎわ)が女性の価値を下げるごとはままあるが、うまくやれば、お互いをより魅力的に見せることができる」
結局自分のためじゃないの。
反発心を覚えながらも、ダイニングルームの前まで来てしまっていた。
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