双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(249)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
「ここやったら、他の患者さんに気兼ねせんでから、みんなお見舞いに来れるね」
「そうやねぇ」
「ここ広いけん。ベッド入れてもろうたんよ。毎日これで寝るわ」
簡易ベッドといっても、夏場に縁側で使うようなビニール巻きのデッキチェアで、こんなものでも一日数百円のレンタル料を病院に納める。そして、個室に移るとすぐに看護婦が室料に関する料金表を持って来た。保険の利く六人部屋と違って、ここは一日四万円らしい。一ヶ月で百二十万円。新居の敷金礼金等を支払ったばかりで、毎月払えるのか心配になった。
オカンはもう固形物は全く口から入れることができなくなり、口にするのは水分だけ。ほとんどの栄養が点滴から注入される状態になった。
いつの間にか朝型の生活をしているらしいオトンが毎朝、笹塚の家から病院に来る。オトンが来ると交代でボクは仕事に出掛ける。病室で書ける原稿(げんこう)は極力そこで片付けた。
ミッチャンは相変わらず毎日来てくれる。毎日、誰かしら見舞いに来る。オカンがひとりきりになっている時間はほとんどなかった。
最初の頃は身体を起こして座ることもできたし、しっかり会話もできた。
でも、桜の花が開くたびにオカンの身体は自由が利かなくなり、もう、トイレにも行けなくなった。ひとつずつ、オカンの身体の中を通るカテーテルが増えてゆく。
ボクはその過程をただ横で眺めるだけで、なにもしてあげることも、奇蹟も起こせないまま、ただそこにいる。
微熱が続いている。ボクは製氷器から氷を運んで来て、洗面器の中でタオルを冷たくしながら手のひらや足のうら、寝着から出ている部分を一日に何度も冷やした。
「オカン、絶対治るんやけん、頑張らんといかんよ。心配せんでよかよ」
オカンはボクの方が見ながら、ただうなずいていた。
「痛いんやろ?腹痛いんやないと?」
徐徐に腹水が溜まり始めていた。
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