双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(266)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
"そげなことを考えたらいけん。あんたはあんたやろ。今、せにゃあいけんことをしっかりやりなさい。ここで待っとるけん。書きなさい"
普段、向上心というものを人並み以下にしか持っていないボクだけど、その時ほど悔しいと思ったことはない。人にバカにされないような仕事ができる人になりたい。横で死んでいるオカンまでバカにされたよな気分になって、自己嫌悪に陥った。
書きたくない。でも、かけなければいけない。それは仕事だからでも約束だからでもなく、このまま掛けなければオカンが気にするからだ。
原稿用紙を取り出した。
あんたたちが大笑いするような原稿を書いてやる。やっぱり、あいつに書かせて正解だったわぁと言わせてやる。誰にも書けないようなものを書いてやる。おまえたちみたいなド素人にチェックなんかできない完全に美しい文章を書いてやる。
その原稿が書きあがった頃、また別の編集者がイラストを取りに来た。ボクはなにも言わずにそのイラストも一生懸命描いた。
全部が終わった頃には夜もすっかり更(ふ)けていて、インクのついた手のままオカンの蒲団の中に潜り込んだ。
「オカン……。今日は疲れたわ……」
蒲団の中もオカンの身体もアイスクリームのクーラーみたいに冷たかったけれど、くたくたのボクにはちょっと心地良かった。
"よう頑張ったね。もう寝なさい"
オカンもボクも、この家で寝るのは初めてだ。床下からタコ社長たちの声がする。何人いるのかわからないが、みんなまだ飲んでるらしい。笹塚のキッチンみたいだ。
別れた彼女が階段の下からボクを呼んでいる。降りて来いよと言っているらしい。ボクは蒲団の中に入ったまま返事をしなかった。
返事をしないことで呼ぶ声が強くなる。でも、ボクは返事をする気がしなかった。
今日はくらいは、静かにオカンといさせてくれ。冷たいけれど、なんか温かくて気持ちいいんだ。
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