双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(268)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
"そんな狭苦しい所に入っとってから、なんで平気なん……?"
蓋をされた棺桶。顔のあたりには小窓があってオカンの顔を見ることができるのだけど、そこには薄いプラスチックが一枚張ってあって、覗くたびに涙が透明の板の上ではじけた。
親戚、知人、友人、仕事関係、たくさんの方からどんどんお花が届く。
"オカン、こんなにたくさん花を貰うたことないやろ。よかったねぇ"
喪服のないオトンのために紳士服の大型量販店でbjが一揃え買って来た。
「こういうかんじのでいいですかね?」
「まあ、よかろうたい」
福岡から、ノブエおばさん、えみ子おばさん、ブーブおばちゃん、オカンの仲良く姉妹が到着した。
おばちゃんたちはオカンを取り囲んで小学生のように泣きじゃくった。
蛇崩交差点の酒屋、寿司屋から、次々に配達が届く。引っ越してきてだしぬけに葬式を始めているの家の近所の家や商店の人々も何事かと思っていることだろう。
親戚や友人が次々にやって来た。ボクは必要以上にできぱきと働いた。立ち止まると悲しみが込み上げてくるからだ。家具のない殺風景な部屋のひとつひとつに人が溢れてゆく。
「八海山二十本買って来ました。」
オカンの好きだった酒。普段は紙パックに入った安価(あんか)な清酒をチビチビと飲んでいたけれど、いつの時か、修さんがお土産に持って来てくれた八海山を飲んでいたく気に入ったようだった。
"八海山ちいうて、有名なお酒らしいよ。ほんにおいしいもんねぇ"
bjがお客さんの前に一升瓶を並べている。栄哩の作ってくれた料理も届いた。
玄関から走るようにして美由紀さんが入ってきて、ボクを見つけるなり抱きしめながら言った。
「淋しいだろうけど、男は母親が死んでからやっと一人前になんのよ」
そうかも知れないなと、ボクも思った。
「みなさん、どんどん食べて、飲んで下さい。オカンは楽しいことの好きな人だったので、辛気臭くならず、飲って下さい」
これが引越し祝いやったら、本によかったのにからね、オカン……。ボクは一部屋ずつ回って酒を注いだ。
三階の隅では、ホセと月岡が向かい合ってプラスチックのコップを握りしめている。
「今日は、月岡さんに負けません。お母さんが見てますから」
「いいや。お母さんはおまえの味方はしてない。俺は絶対に、負けない」
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