双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(251)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
いや、それが現実の話ではなくとも、オカンは意識の中で、東京タワーの展望台を、そのまた上空を、本当に何度も昇ったかもしれない。本当じゃないはずなのに、まるで本当の話のように耳に伝わった。
オカンはオトンの中の世界で、オカンの意識の宇宙で、そこに何度も昇って行ったかもしれない。ボクと一緒に行くと約束したその場所に。
鼻、口、尿道、呼吸器、もう数えきれないほどのカテーテルがオカンの身体から延びていた。溜まった胃液を外に吸い出すためのチューブは、看護婦の見よう見まねでなんとかボクでもそれを操(あやつ)って吸い取ることができるようになった。
腹水の溜まる速度が速くなり、カエルのような腹になっている。そのたび医師に針を刺してもらい、水抜きをした。
心電図はずっと枕の隣できちきちと働いている。
ミッチャンが病院に交渉(こうしょう)してくれたおかげで、個室料金が六人部屋と同じ類額になった。
撮影(さつえい)の仕事スタジオにいた時、プロデューサーが掛けてきて、すぐ病院に向かって下さいと言われた。病院に連絡するとジュースを気管に詰まらせて呼吸困難になったらしい。
急いで病院に戻った。なんとか持ち直したようで、薬を入れられて深々と眠っていた。
それから、オカンは液体を飲むということができなくなり、水分は氷をくちびるに当ててやるとか、水に浸したガーゼで口を拭くなどして、かろうじての水分を補給した。
オカンの痛みは断続的に続くようになった。かなりの量のモルヒネでも効きが弱くなってきている。身体はほとんど働かなくなっているのに全身から苦痛の様子が手に取るようにわかる。
「あつい……」「こおり……」「いたい……」
刻み出すような声でオカンは言った。ボクはそのたび、氷をくちびるにつけ、手足をおしぼりで拭き、身体をさすった。なんの意味があるのかわからないその行為だけをただ愚鈍(ぐどん)なまでに繰り返した。
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