双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(257)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
ボクたちにとって、なによりもかけがえのない人であっても、この人たちにとっては毎日起こる仕事の中のひとつ。どこかの誰かが死んで、また、別の誰かが死ぬ。
人の命や死に対して、完全に麻痺した人間の言い方だった。
それを聞いてボクが立ち上がるとベテラン看護婦はバツの悪そうな顔でそそくさと病室を出て行った。
ボクはオトンを揺り起こしてベッドの脇に座り、オカンの顔を覗き込む。
すると担当の医師が言った。
「危篤です」
オカンは一生懸命開こうとする眼を痛みで引きつらせながらもいた。
「オカン、痛いんか……?」
唸るような声が声にならない。左手を握りしめながら額の汗を拭いた。心電図に映る心拍数や血圧の数値がどんどん低くなる。
ボクの後ろで立ちすくんでいるオトンがひねり出すような声を上げた。
「栄子……!」
オトンはオカンの髪の毛を撫でた。オカンの乾(かわ)いて割れたくちびるがパクパクとなにか言おうとしている。
「どうしたんか?オカン?熱いん?」
濡らしたタオルで額や手のひらを冷やす。寝着が汗でぐっしょりと湿っている。
「なんか欲しいんか?のど渇いたん?」
その問いかけにオカンは喉のもっと奥の方から切れ切れに答えた。
「……み……ず……」
「わかった。ちょっと待っとき!オレ、氷取ってくるけんね」
ボクはマグカップを持って製氷器に走った。ガラガラと無機質な音をたてる製氷器の取り出し口に手を突っ込んで、入るだけの氷を山盛りにして病室へ戻った。
医師も看護婦も、何をするでもなく、ただ計器に目をやるだけで立ち尽くしている。
ボクは氷をひとつ指につまみ、口紅を塗るようにしてオカンのくちびるにそっと当てた。
それをオカンは必死に吸いつこうとしている。今まで一番、欲しがろうとしていた。
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